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新緑が香る季節。 一人の青年が懐かしい駅に着いた。 「マスター!!」 電車から降りたブロンドの髪の青年は、ホームにいた待ち人をみつけ、そう呼んだ。 「アレン!全く・・・いきなりだな、お前は。」 クスッと笑ってマスターは彼を迎えた。 「やっと研修が終わったんです。」 にこっと人なつこい笑みを浮かべてアレンは豊かな髪をなびかせて駆け寄って来た。 「お前が医学の道に進むとはなぁ。」 アレンが人間になってから3年が過ぎていた。 彼は人間になって、医師の道へ進んだ。 目覚ましいスピードで試験にも合格。 今日はその医療研修が一段落したので帰省したのだった。 「それで?うまく仲間とやっていけそうか?」 二人が馴れ親しんだ自宅に戻ってきて、マスターが彼独自の特製ホットミルクティーを作りながら聞いた。 「ええ。とても気のいい仲間達ですよ。」 「そうか、それは良かった。お前に向いている道なのかもしれないな。」 特製ミルクティーとアールグレイ味のクッキーをテーブルに出し、マスターは腰を下ろした。 「嬉しいなぁ。僕の好きな取り合わせだ。た、食べてもいい?」 「無論♪」 夢中でクッキーと紅茶を口にするアレンに向かって問いかけてみた。 「…なあ、まだ教えてはくれんのか?」 「言ったでしょう。僕が一流の医者としてやっていけるようになるまでは医師を目指した目的はマスターといえど明かさないことにしているんですよ。」 さらっとアレンに返されてしまっては流石のマスターも何も言えなかった。 「判ったよ。まったく、そういう頑固な所も昔と変わらんな。」 「ありがとうございます。」 屈託ない笑みを浮かべて無邪気に返答するそんなアレンは、やはり昔のままの彼だ、とマスターは嬉しかった。 人として成長する彼を見守るのはとても喜ばしいことであったが、同時にどんどん自分の手を離れて手元から巣立っていなくなるような気がして時には不安にも駆られた。 けれど、アレンの笑顔がそんな不安をぬぐい去ってくれる。 ―子離れしないな、オレは。 そんなことを考えてると、不意にアレンの声が飛び込んできた。 「マスター!行って来ますよ?」 「あ?ど、どうした?どこかに行くんだったか?」 「もう、やっぱり上の空だ。これからちょっと僕は図書館に出かけて来るって言ったんですよ。夕方までには戻りますから、それまでゆっくりしていて下さいね。」 最初はすこし拗ねていたが、アレンの語尾はいつもの柔らかい口調だった。 「ああ、すまん。気を付けて行って来るんだぞ。」 「はあい。判りました、マスター。」 そういって、弾む足取りで軽やかに街へと飛び出していった。 アレンは久々の懐かしい街を眺め、歩きながら思いを巡らせた。 ―本当はね、マスター。もううち明けてもいいかと思ってはいたんだ。 目指した理由。心の底から喜んでくれたから。 本当は、あなたの為だから―。あなたと、あなたを取り巻く大切な人たちを守りたかったから―。 でも、やっぱり大成するまでは、貴方には打ち明けない。 打ち明けてしまったら自分のどこかで甘えが出てしまって、いけないから―。 達成できなくなってしまうような気にさえなってくる、自分の決心のぐらつきが怖いから―。待っててくれますよね?マスター。 アレンの心を包むような柔らかな風と、優しい日差しがマスターの答えかのように、これからの希望に満ちた未来を語るように爽やかに抜けて行った―。 END ☆医者ですよ、アレン! どこぞの(うちの)一生マスターのヒモやってそうなアレンとは大違いですな!! と冗談はともかく、与えて与えられる関係をふと考えてしまうお話ですね。こんな風に、いつでも『ひとりの人間』が二人で寄り添っている関係であれたら良いですね♪ |