退魔庁付属機関高等専門学校”大和武尊”
L8ディヴ 怪談『刻鏡』 |
第6回 郁実: 刻鏡の事、何にも知らないって言ったくせに……。 時岡: だって、実行犯は僕じゃないだろう。 郁実: でも、仮面長官とかの事件と同列で、真相は知ってたはずでしょう。これ以上誰かを疑うのも嫌だから、あんたの言う事を信用したのに。 時岡: ん〜、どうかな〜。ところで、仮面長官の事をどこで知ったんだい? 郁実: 後輩の七葉槇と一緒に夜の学校に忍び込んだ時に、美術準備室の先客が証拠を掴んだんですよ。先生は、傀儡を目くらましに使っていたんでしょう。 時岡: うーん、そうかもね。でも、刻鏡はまったく別件だよ。ところで、どうして七葉君とコンビを組んでたんだい? そんなに仲良かったっけ。 郁実: 別に。警備員巡回ルートマップを持ってる知り合いはあいつくらいだったから。 時岡: 七葉といえば、双子の姉弟だよね。お姉さんのまゆちゃんと三人で行かなかったのかい? 郁実: 冗談じゃない。夜の校舎に忍び込むのに、女の子を連れていける訳がないでしょう。 時岡: おや、意外とフェミニスト? 進藤: お前と七葉弟のコンビってのも、凄いもんがあるよな〜。 郁実: 進藤? お前今まで何やってたんだ。 進藤: お勉強〜〜。ま、それはともかく。七葉槇って言えば、結構無口なところとかお前と似てるじゃん。ああいうのと、気が合う訳? 郁実: 気が合うとかの問題じゃないけどな。そうか、似てるせいか。どうも俺は槇には嫌われてるみたいだったぞ。 進藤: それだけじゃないだろ。ほら、お前はまゆちゃんのお気に入りだったから。弟としては、それが気に入らなかったんだろ。 郁実: どうしてそういう事になったんだか……。 進藤: まゆちゃん的には、氷村が槇に似てるからってのがきっかけだったらしいぞ。 時岡: それで弟の方は自分と似ている氷村を目の仇にしてたんだから、不毛な三人だなあ。それにしても、よくあのお姉さんを押さえたじゃないか。走り出したら止まらない、爆弾娘って噂を聞いたけど。よく物を壊すクラッシャーだとかって話も。 郁実: その通りです。飛びつかれた拍子に眼鏡を壊されたし。まあつまり……この頃には俺もずいぶん年下の扱いが上手くなってたって事です。 進藤: あ〜、燐太と海里のわんわんコンビに懐かれてたからなあ。 時岡: 七葉姉、どうやったんだい? 郁実: 大人しく待ってたら、新町で焼まんじゅうを買ってやるって言ったんですよ。 進藤: やきまんじゅうー? 郁実: 知らないのか? 上州名物だ。甘い醤油だれを付けて串で焼いたまんじゅうだよ。 進藤: それは知ってるけど……何で焼まんじゅうなんだ? 郁実: 俺が好きだからだ。 進藤・時岡: ……。 郁実: なんだよ。 進藤: いや何でも。あーそうそう。そういえば、とうとう鷹代一希が刻鏡の真相に近い事を発表したよな。お前も集会に呼び出されたろ? あいつ、刻鏡を調べてる学生の中から代表者に声を掛けまくってたからな。 郁実: 最初はおかしいと思ったよ。転移は陰陽師の使う術なのに、榊先生が犯人だとか言うし。あの人は退魔師だろ。そしたら北条が榊先生も転移を使えるとか言い出して。住吉木優希が榊先生に襟を掴み上げられたらしいな。北条もえらく怯えてた。 時岡: キレると何するかわからんね。あの人は。女の子にも手をあげるのか。 進藤: ま、一応はあの人なりの持論あっての事だろ。ともかく、この集会で大体の背景が見えてきた訳だ。 郁実: そうだよ。進藤! お前、まるっきり敵前逃亡じゃないか。どうしていきなりリーダー交代投票だよ。おかげで面倒くさいクリスマスパーティにも出なきゃならないし。 進藤: 成績急降下したんだよーー! 刻鏡活動禁止。勉強のせいで殆ど活動できてなかったし。皆には悪いと思ったんだけどさ。勘弁してくれよ。信頼できる人間を投票で決めるのが一番だったんだよ。その方が安心できるからさ。それにたまにはメンバーの交流も必要だろ? いいじゃないか、面倒だとか言ってる割には、良く集会にも顔出してたし。 郁実: なりゆきだ(マジで)! それに万年筆はまだ見つからないし。 進藤: ま、とにかく来月のクリスマスパーティの投票でリーダーは決まり。辞退不可! 時岡: うわー、横暴(笑)。おや氷村、顔色が良くないね。 郁実: …………。 PL的回想 |
第7回 進藤: さて、クリスマスパーティだ。北京ダックもあって、信じられないくらい豪勢だぞ。何せ、榊先生の餞別の2万があったからな! 郁実: ……。 進藤: あ、新リーダー、がんばれよ。 郁実: 俺はお前を、恨んでも恨みきれない……。 進藤: お前が選ばれたのは、俺のせいじゃないだろー? 信頼されてるんだから胸張ってろよ。 郁実: 面倒なんだよ! 進藤: 問題発言だなあ……。だからサブリーダーに迫水誠一郎と鷹代を付けたじゃないか。実際、メンバーのほとんどがこの三人のいずれかとツルんでる状態だったからな。ところで、俺がいなくなった後のパーティでは、何やってた? 郁実: ……はないちもんめ。 進藤: はい? 郁実: はないちもんめ、だ!! 進藤: は、はは、は……。 郁実: 笑えば? 進藤: はははははははッ!! そっか、燐太と海里か! まゆちゃんもいるしなあ! 高校生のやる遊びじゃないよなー。ところで、メンバーは? 郁実: 燐太と海里、雇姑、前田、北条、まゆちゃんに槇、天野鈴鳴と信楽寺薫子。んで俺。 進藤: すっげえメンバー……。 郁実: 燐太達に絡まれてる北条を助ける為に仕方なく、だ。 進藤: そういえば、天野とまゆちゃんの水面下の争いが凄かったみたいじゃないか。 郁実: 俺は知らないぞ。 進藤: そっか、知らないのかー。受付けで険悪だったみたいだぞ。天野が『ボクは郁実の彼女なんだから彼に近付かないでね』とか言って、まゆちゃんはそれを聞いて敵意を燃やしちゃって。 郁実: 鈴鳴……。それであの二人、あんなにピリピリしてたのか。まったく。 進藤: まあ、ただの挑発だって事はまゆちゃんも分かってたんだろうけどさ。ところでクリスマスといえば、プレゼントだろう。交換以外に何かもらったか? 郁実: ……まゆちゃんから、バスマット。じゃなくてマフラー。 進藤: あー、なんか、想像できるな。バスマットのようなマフラー。まあ、女の子からプレゼントもらえるだけでも幸せだぜ? 郁実: 面倒なんだよ、こういう事は。 進藤: 今お前、男子の何割かを敵に回したぞ。まゆちゃん、結構モテるんだからな。 郁実: プレゼント交換といえば、あの中に妖魔を封印した教材用の銀盤が混ざってたよな。あれ、誰の仕業だったんだ? 進藤: ……分かってて、訊いてる? 郁実: 当然だ。あれのせいで大騒ぎだ。面倒事を押し付けられた途端に、妖魔騒ぎか。信楽寺は止める間もなく美術室で攻撃魔術使うし。 榊: 刻鏡の調査を課外魔術実習として申請して、堂々とやれる口実をわざわざ作ってやったんだろうが。ありがたく思え。 郁実: ……。 進藤: あー、険悪なムード……。 榊: いいかげん、やる気のない素振りはやめておけ。俺に対する怒りが頂点に達しているくせに。そういうパワーを有効に使えと言っているんだ。お前は自分には厳しいようだが、他人に甘すぎる。どうして術者を育てる機関が存在するのか、そこをちゃんと考えろ。 郁実: ご高説ごもっとも。確かに俺は甘いよ。あんたの高尚な教育方針に口を出すのは本意じゃないけどな。それが正しいとかの問題じゃない。単に俺は、あんたのやり方が気に入らないだけだ。 榊: お前も正退魔官になれば解るさ。別に俺は、卒業した後お前らが実戦で犬死にしようが知った事じゃないけどな。 進藤: お、おふたりさーん……。 郁実: あんたにはあんたのやり方があるんだろうが、俺から見てマイペースに過ぎる。あんたの言う通り、俺達は未熟だよ。だからこそ、そのペースについて行けない者があんたを理解できずに怯える事になる。 榊: それこそ、願ったりだ。恐怖に立ち向かえない腑抜けなら、退魔官になる必要なんてない。ただ、なんだかんだ言ってそれに黙ってついてきたお前も、結局は俺と似た者同士という事だ。 郁実: 俺は、俺の弱さを知ってる。それを許せないだけだ。あんたの言う事はもっともだが、せっかくの芽を潰すような真似をして欲しくない。 榊: その台詞は、そっくり返すよ。厳しさに潰れるのも、甘さに潰れるのもそいつ次第だ。まあ、せいぜいお前は仲間を大事にしてやるんだな。それが間違っているとは言わないし、俺もそこまで介入するつもりはない。 進藤: 誰かこの二人、止めてくれ……。 PL的回想 |
第8回 榊: 正月休みは、それなりにリフレッシュしたみたいだな。 郁実: 笑いたければ笑え。 榊: 別にお前がどんな騒ぎに巻き込まれようが、俺の知った事じゃない。まあ、童返りの激しい後輩集団の面倒を見ている点については、多少同情するがな。 郁実: 何が哀しくて、高校生がインガマン……。 榊: 泣くな。それよりも、休みが明けたら魔術実習だ。いいか、黒澤(NPC・黒澤光弘)の事は後にするとして、まずは刻鏡の真相だ。実習参加者の中でもお前が誘導するのは刻鏡の調査に携わっている者だ。多少の騒ぎにはなるだろうが、うまく誘導してやれ。 郁実: わかった。 榊: 段取りは頭に入ってるな。魔術実習といっても、実際に魔術の強化などをするつもりはない。その辺の沈静も頼むぞ。 郁実: 信楽寺の時のようにはならないように注意するよ。 進藤: ふたりの、この静けさが怖い……。 榊: 刻鏡の件では、多くの生徒が情報に惑わされた。その辺の選別能力がなければ、これからやっていけないからな。こういう学校では教えきれない事を学生に教えるのが、学生の間でも騒がれていた『プロジェクト・ピサ』計画だ。刻鏡の件も、この『P2』計画の一貫だからな。 郁実: 学生の持ち物まで盗み出して、ご苦労なこった。 榊: 苦労したさ。美術室の鍵を盗んでそっち関連の講師に目を向けさせたりな。最終的にはわざわざタロットカードまで持ち出して。結局、哀れなくらい見事にタロットのフェイクに振り回されてくれたな。 郁実: あれがフェイクだなんて、普通誰も解るもんか。 榊: タロットが囮りなのは現実だ。だからたまには駒の置き方を変えるのも必要だと言っているんだ。一遍通りの考え方では、絡んだ結び目を解く事なんて出来る訳がない。術者に必要なのは、魔術だけじゃないんだよ。憶えとけ。 郁実: だが、本当にあんたが実習参加者に言いたいのはそんな事じゃないだろう。なんでこの期に及んで隠そうとするんだ。実習ですべてを明かすと言ったから、屋上での事は追求しないでいたのに。 榊: 結局、お前が言ったんだからいいじゃないか。刻鏡は、実際は確かにP2の一貫だったんだ。実習で言った事も、嘘じゃない。状況が変わってからの進行が思っていたよりも早かったから、戸惑っていたのもあるがな。実際、あまり大騒ぎすると危険だった。だからお前ら代表だけを指導室に呼び出したんだ。 郁実: 相手は講師だし? 榊: その話は後だ。来月講堂の演劇部ゲネプロに集まれば、どういうことか嫌でも分かるだろう。とにかく隠密行動でないと困る。仲間が怪我してもいいなら話は別だがな。 郁実: ……努力はする。 進藤: ううう……肝が冷えるよ、この二人の会話……。 PL的回想 |
第9回 郁実: 2月29日は講堂決戦だ。 榊: 結局、来る事にしたんだな。 進藤: その前に、バレンタインだ。 榊・郁実: ……。 進藤: ふたりそろって嫌そうな顔するなよお〜〜。このイベントに期待をかけている小市民な男の気持ちなんて、黙っててもチョコもらえる奴等にはワカラナイかもしれないけどさ〜。 郁実: 安心しろ、俺だってほとんどが義理だ。 榊: そんなに欲しければ、俺の机からいくらでも持っていけ。 進藤: ほんっとに、素でムカつく奴等……。 郁実: 気持ちは有難いが、どうもこういうイベントには馴染めない。 進藤: 本命チョコまでもらっといて、よくそんな事言うなあ。 郁実; お前はあれを知らないから……。 進藤: いーや、知ってる。廊下で派手に追いかけっこしただろ。見てる奴は見てるぞ。お前の主張はともかく、男子には羨ましい限りだ。 郁実: ……。 進藤: そんでウワサでは、ここでお前のファースト……。 郁実: あーあー、とにかく、ゲネプロだ。 進藤; 顔が怖いよー。怒るなよー。ほんっと、このテの話したがらないんだから。 郁実: 怒ってない。先に進めるぞ。 榊: 先に進んでも今回は報われなかったな。 郁実: ……。 榊: 俺の手がふさがっていた事を幸運に思うんだな。でなければうっかり殴る加減を間違えて病院送りかもしれん。 郁実: あんたはそういう男だよ。あの時は無意識だったんだよ。反省は……してるけど。 榊: 別に反省する必要はないがな。前から危ない奴だとは思っていたが、今度こそ本当に壊れるかと思ったぞ。無意識だから、なお質が悪い。べろべろ魔術を暴走させやがって。少しはマインドコントロールを憶えたか。 郁実: ……おかげさまで。 進藤: あの〜、話が見えない。何があった訳? 郁実: その……一緒にいたまゆちゃんが俺を庇って怪我をしたんだよ。その時多分、昔あった事件がフラッシュバックして……。 榊: お前はその後を憶えていないだろう。めちゃくちゃに魔術を使ったと思ったらいきなり泣き出して、あのままにしておいたら確実にぶっ壊れそうだったから、俺が七葉弟に氷村を止めるように言ったんだ。で、奴が殴り飛ばしてやっと正気に戻った。 郁実: 本当に嫌な奴だな。だから、悪かったよ。 進藤: けっこう、怖い奴だったんだな……。 郁実: で、俺達が亜瘴鬼と闘っている間、黒幕の黒澤講師は逃げたのか。 榊: そうらしいな。追いかけた生徒はいたらしいが、結局行方知れずだ。鷹代達は時岡の傀儡と闘っていたみたいだがな。 郁実: 時岡先生は……。 榊: この場合、今となってはどうコメントしようもないな。ここまで来ると、誰が悪かったとかいう問題でもないだろう。時岡だって、黒沢に荷担なんてしなければこんな事にはならずに済んだんだ。しかしそれすらも、他人がどうこう言う事じゃないな。 郁実: なかなか、割り切れるもんでもないけどな。 榊: まあ、結果はどうあれ学生達も良く頑張った方だろう。講堂の事件に関しては、何とかクリアできて何よりだ。 郁実: あんた、減給だって? 榊: 余計なお世話だ。 PL的回想 |
第10回 郁実: 榊先生の黒い本性とかはこの際置いといて、とりあえずは大団円だ。 榊: そうだな(微笑)。 時岡: 僕の立場は? 郁実: あんた、もう死んでるだろう! 時岡: そうだけどねー、ウラワザがあるんだなー。 郁実: 何です、それは。 時岡: それは、傀儡転せー……。 進藤: とーッとと、それは置いといてー、ここでは死んでて下さい。 時岡: 酷いなあ。ま、死んでるには変わりないからいいけどさ。ところで、どこかの誰かが書いた外伝(このサイトのPBM外伝『Hearts』です・笑)で『時岡が最後に何を叫んだか、知る由もない』みたいな描写があったけど、知りたいかい? ん? 郁実: 別に知りたくない。 時岡: つれないなあ。 榊: 聞かなくても、予想がつく。 時岡: 聞き捨てならないなあ。どれ、当ててごらん。 郁実・榊: くーろーさー……。 進藤: あー、それもいいからーー! とにかく、講堂の決戦の後、何やってた? 榊: 俺はいつもと変わらん。 時岡: 裏切り者……。 郁実: 俺はまゆちゃんの見舞い。 進藤: あ、氷村! お前、なんだよ! 俺はてっきりまゆちゃんとお前は、らぶな、らぶな……。 郁実: 一身上の都合だ! 進藤: もったいない……。で? 遊園地にも行っただろ。 郁実: 燐太だか海里が行きたがったみたいだな。『ねずみ王国』に行ったのは初めてだが、あれはちょっと……今時の遊園地は、みんなああなのか。白無垢姫だとか、7人の媚太だとか……。 進藤: う〜、あそこは特にな〜。確かに、氷村が好んで出掛けるような場所じゃないな。 郁実: 雇姑が媚太たちに攫われて、池ポチャされてたな。あれは愉快だったが。 進藤: ひでえの(笑)。でも、面白いかも……。榊先生、今度ねずみ王国でデートしませんか。 榊: 殺すぞ。 進藤: この人が言うと、冗談に聞こえないなあ……。 郁実: 遊園地を破壊されたくなければやめとけ。 榊: とにかく、刻鏡の件もこれで終わった訳だ。ちゃんと得る部分はあっただろう? 郁実: 多分にね。 榊: 『いいえ』なんて言ったら張り倒すところだ。正退魔官になれば、あんなものじゃ済まされない事が嫌というほど出てくる。せいぜいしっかりやるんだな。 郁実: 一応世話になったからな。幻滅されない程度にはやるつもりだよ。 榊: まあ、妥当な返事だ。それじゃ解散。 進藤: お疲れさん。 郁実: あ……万年筆、返してもらうの忘れた……。 PL的回想 |
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